- 日時:平成20年7月12日(土)
- 会場:三沢市立古間木小学校
- 参加人数:23名
- 司会:SSTA青森支部 事務局長 藤田裕司
講師:大阪教育大学 教授 松本勝信
昨年度に引き続き,青森支部では理科学習に科学史を取り入れる試みを続けている。本研修会では「科学が好きな子どもを育てる教育〜科学への関心を高め,科学的思考力を高める授業の工夫〜」のテーマの下,大阪教育大学教授 松本勝信先生を講師に迎え,科学史を取り入れた理科学習の可能性と有効性を探るべく,研修を行った。
内容
■開会行事・講師紹介■8:15〜8:30
■趣旨説明■8:30〜9:00
「なぜ,私たちは理科に科学史を導入するのか」
SSTA常任理事・青森支部長 工藤隆継
「私は,理科に科学史を導入することによって,こん なにも理科や科学が楽しく奥深いものになり,子ど もがこんなにも理科や科学が好きになり,しかもし っかり考える力が育つことを,そして,そのことに よって革命的と言っていいほど理科が変わることを 述べたいわけである。(発表資料p1より)」
支部長自身が「フロギストン説」と出会い,「ものの燃え方と空気」の授業を構築していったエピソードを基に科学史導入の有効性について説明があった。
科学史の導入は,必ずしも科学史を教えることではない。教師が科学史を学ぶことによって,実はだれもがそう思っていた(素朴概念)ことに改めて気付き,子どもの考えをある程度予測したり,追究の過程を科学史に学んだりするという導入もある。
■「科学史」を取り入れた授業実践の発表■9:00〜11:50
- 「ものの燃え方と空気」南部町立名久井小学校 教諭 久保慶喜
通常,この単元では「なぜ(火が)消えたのか」を問題として学習が進められる。しかし,フロギストン(燃素)説に見られるように,人類は「なぜ消えるか」を考える前に「なぜ燃えるのか」「何が燃えているのか」を問題にしてきた。
そこで,本実践では「ろうそくはどうやって燃えているのか」をじっくり観察したり追究したりする活動を行った。
単元終了後,子どもたちは解決できたこととして「燃えている物の正体。なぜろうそ くは燃えるのか分かってすっきりした。」などを挙げていた。また,解決できなかった こととして「O2→CO2になるときの『→』の部分」を挙げるなど科学への関心が高まって いる様子が伺えた。
- 「明かりをつけよう」五戸町立南小学校 校長 工藤隆継
豆電球の構造を考えさせることによって電気の通り道(回路)についての理解を深め,科学的思考力を高めようという実践である。
その際,エジソン電球を作る(提示実験)ことによって電球が確かに回路の一部であることを実感させたり,電球の科学(技術史)に触れさせたりして科学への興味関心を高める…というスポット的な科学史導入が図られた。
- 「大気圧」五戸町立倉石中学校 教諭 田代さおり
力の働き→力の釣り合い→面に働く力(圧力)→大気圧という単元構成における「大気圧」の実践であ る。導入した科学史は「トリチェリの水銀柱の実験による大気圧の存在の確認」である。実際に水銀を 使うことはできなかったが,導入で行った「瓶に満たした水をコップに注ぐ実験」を基に,力の関係に ついて様々な意見が出され,真剣に考える様子が見られた。
■講演■12:40〜13:50
「科学史導入を私はこう見る」大阪教育大学 教授 松本勝信
松本先生からは「考える力の育て方」にかかわって,科学史を導入することの意義を説いていただいた。
考える力は「既にもっているものを変える(修正・改善する)ことによって育っていく」。つまり,仮説(考え方)の有効性・限界を確かめ,有効でないものを修正改善するという学習活動を体験することによって考える力を育てることができる。
一方,科学史は正に修正の歴史である。ということは,科学史を直接的・間接的に導入することは,「仮説(考え方)の有効性・限界を確かめ,有効でないものを修正改善するという学習活動」の体験を可能にすることであり,考える力の育成につながるのである。
また,今後の「宿題」もいただいた。科学史の導入によって子どもの何が変わったのか…という成果の見取り,つまり評価についてである。「能動的自己評価」について御教示いただいたので,今後の実践に生かしていきたい。
■閉会行事■13:50〜14:10
青森支部では,科学が好きな子どもを育てるための戦略として科学史を理科学習に導入する試みを本にまとめる予定である。
今回の研修によってさらに明確になってきた有効性や課題を踏まえて各自の実践を積み重ね,単元の開発を進めるとともに,青森支部から提案する「理科学習における科学史導入」の輪郭を明確にし,全国に向けて発信していきたいと考える。
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